その暴走を止める者
―自分で行動あるのみ―
暑い夏、雲一つない晴天。
そんな熱い空気の中、時々吹く涼しげな風が肌に触る。
爽やかな気持ちでは空を見上げる。
が、
「何空なんて見上げてんのよ!!ちょっと、聞いてるの!?」
「何とか言いなさいよ!」
今置かれている状況は、全く爽やかでも気持ちいい状況でもない。
むしろ最悪な状況だ。
何が楽しくて放課後こんな所に呼び出されないといけないんだ。
授業が終わって早々、何やらお怒りの様子な女子軍団に呼び出され
ご丁寧に体育倉庫前まで案内された。
あまりにもお決まりすぎて、笑ってしまう。
「何とか言いなさいよ、って・・・・・何言っても聞いてくんねぇじゃん・・・・」
「うるさいわね!!なんであんたみたいな生意気な奴がマネージャーなんてやってるのよ!!
景吾や侑士達とベタベタして!!」
「そうよ!!跡部先輩と全然つり合ってないじゃない!!」
ボソっと言うと、すごい勢いで言い返してくる。
学年もさまざまな氷帝学園テニス部のファンクラブの方々。
1年から3年まで、よりどりみどりだ。
「あたしはあなた達みたいに自信過剰じゃないし、
あいつ達に近づくためにマネージャーになったんじゃない。
なんであたしがマネージャーやってる事があなた達に関係してくるんだ」
「関係あるのよ!!ファンクラブにも入らずに仲良くなって!!
いい!?氷帝テニス部ファンクラブには厳しい掟があるのよ!
呼び方は1年はみんな先輩付け。2年は同年代の人のみ苗字で呼べる。3年はみんなを苗字で。
そしてファンクラブ会長のみ、テニス部全員を名前で呼ぶことが許されるのよ!!」
「あーはいはい。それじゃ、あたしはマネジャーだから好きなように呼ばせてもらいます。
だから、もう帰ってもいいか?まだマネジャーの仕事が残ってんだよ」
だからもう黙ってくれーという風に気だる気に言う。
本当なら一言で黙らせてやりたいところだが
ちゃんと「あなた達」って丁寧に呼んでいるし、今のところ感情も抑えている。
こういう自信過剰な人間には、とりあえず下手に出て嵐が過ぎ去るのを待つのが一番だ。
一方、そんな光景を木の影から見守っている・・・・・否、
楽しそうに見物している
人物達。
「女の恨みってのは、怖いもんやな」
「そうですね・・・先輩、大丈夫なんでしょうか?」
「あぁん?鳳、何言ってんだ。心配する人物を間違ってるぞ」
「そうだぜ、長太郎。あいつの心配は無用だ」
「けど、宍戸さん!」
「まぁ見とき。心配しなあかんのはやなくて、あの女子達やから」
あぁ、もうだんだんこの女子達の相手してんのが面倒になってきた・・・・・・
ったく。なんだってあたしが文句言われなきゃならねーんだよ。
いい加減ウザくなってきた・・・
ここらへんで、終わらすか。
「あのさ・・・・・要するに、あたしが妬ましいって事?」
「っ・・・・!!アンタが目障りなのよ!!」
あ、やべっ。直球に言い過ぎた。
トップらしい女の平手が振りかざされる。
そして、真っ直ぐあたしに向かってくる。
あぁ、少女マンガとか、か弱いヒロインとか、かっこいいヒーローとかなら
ここで守ってくれんだろうな・・・
ピシッと振りかざされた手を止めて、守ったり。
・・・・うわっ、なんか乙女チックな事考えしまった・・・・
気持ち悪りっーーー。
パンッ!
数秒の沈黙。
・・・・・・・ほら、誰も止めに来やしねぇ!!
あいつらにそんなカッコイイ事望んだあたしがバカだったみたいだな。
やっぱ他人に期待なんてするもんじゃねえ。
行動は自分で起こすに限る。
「お前らさ・・・・・・・・そこに居るんだろ?
コソコソしてないで、このファンの奴らをどーにかしろよ」
「えっ!?」
おぉ、焦ってる焦ってる。
もしかして、この女達は後ろでコソコソしてる跡部達に気付いてなかったのか?
冷や汗流してる。けっけっけ、いーざまかも。
「す、すいません先輩!
先輩が殴られそうになった時出て止めようと思ったんですけど間に合わなくて・・・」
「あぁ、別にいいって長太郎ちゃん。どうせ跡部とかに止められたんだろ?」
「おい、なんで俺なんだよ」
「お前以外誰がいるってんだよ。忍ちゃんも楽しんでたんだろ?」
「楽しんでたやなんて、そんな人聞きの悪い事やってへんで」
「よく言うぜ。あと、宍戸!お前、長ちゃんに悪い教育してんじゃねぇよ」
「俺は真実を長太郎に言っただけだぜ。お前なら、俺たちが助けなくても大丈夫だろ?」
「おう。今からちょっとブチ切れるから、4人とも耳塞いどけ」
さてと。この冷や汗流して凍り付いている女達に、
このあたしを殴りやがった事を後悔させてやらねーと。
「あのさ・・・・・そんなチミチミ人いじめてるヒマがあったら、
こいつらに好かれるように努力すれば?」
「なっ!!なによ!」
「いい加減ウジウジうるせぇ!!
キーキーキーキー猿みてぇに・・・・!!
お前等、マジで人類か!?動物園の猿山にでも行きてえのか!?」
「ヒッ・・・・!!」
はっ。ちょっと声上げただけでスクミやがった。
これくらいでビビルなら、人殴ったりいびったりすんじゃねぇっつーの。
「人殴っといてピーピー騒ぎやがって・・・・・・・・
大体、なんだよその変なファンクラブの掟ってのは!
気っしょく悪りーな!!寒気がするぜ。あぁあ、おぞましいったらありゃしねー。
呼び方は1年はみんな先輩付で、2年は同年代の人のみ苗字で呼べて、3年はみんなを苗字で?
おまけに会長のみ、テニス部全員を名前で呼ぶことが許される?
ったく、阿呆みたいな掟のあるクソファンクラブなんて潰れちまえ。
何ならあたしが皆名前で呼んでやろーか?
ナルシー景吾ちゃぁん、策略家侑士くぅん、
傷だらけの子犬の亮ちゃぁん、ぱっと見純情少年長太郎ちゃぁん。
ほら、ファンクラブ方々もやりたければ一緒にどーぞ?」
「お、覚えときなさいよ!!」
「あたしの脳は、おめーらみたいな根性悪を覚えてる程余裕はありませーん」
お決まりの捨て台詞残して、スタコラサッサと走り去って行った。
結局あいつらは、何がしたかったんだ?
ってか、今回明らかにあたし損してんじゃん。
殴られ損なんて、あたしとした事が。
かなり甘かった。
「で?お前達はあたしが殴られる様をわざわざ見学しに来やがったって訳か。
部活休んでまで、わざわざご苦労様。
そこに居たなら、あたしが殴られる前に助けに来いよ!!!
こう、『氷帝テニス部参上!』って感じでビシっとポーズ決めて。
ったく。あたしだって殴られると痛ぇんだぞ?」
「まぁ確かに、殴られるのは予想外だったな。
お前の事だから、やられる前にやり返してると思ったぜ」
「そりゃ、やり返してやろうかな〜とも思ったけど
それやったらアイツらがやってる事と同じじゃん」
「・・・・・お前、妙な所で正義感強いな。人生損するぞ?」
「そう思うなら、今日損した分今から跡部が挽回してくれ。
お前のおごりで、ケーキバイキングへ出発!」
結局殴られ損な一日だったけど、
跡部のおごりでケーキバイキングへ行けるんだし、よしとすっか。
おぼっちゃまなんだから、それ位はやってもらわねーとな♪
〜その後、ケーキバイキングにて〜
「しかしお前、よく食べるな・・・・・・・」
「だってバイキングなんだから、食わねぇと損じゃん」
「・・・・・・・太るぞ」
「だまれぇぇぇ!!」
「うわっ、先輩!跡部さんにケーキ投げつけちゃいけませんって!
周りにも迷惑がかかりますし!!宍戸さんも、先輩を止めてください!」
「ほっとけ、長太郎。気が済むまでやらせとけ」
「そうやで。それより、はよ自分の分食っときや。跡部の顔に飛んでってまうで」
「止めんな、長ちゃん!女にはやらなきゃいけねー事ってもんがあるんだ!!」
「おい、コラ!テーブルの上に乗るんじゃねぇ!」
「黙れ、このデリカシーゼロの俺様野郎がぁぁ!!!
花も恥らう17歳に向かって、なんっつー口気いてやがるっ!!」
「何が花だ。笑わせんな・・・・・・って、おいこら!!何するつもりだ!!」
「くらいやがれ、ショートケーキ乱舞!!」
〜後書きと言う名の懺悔室〜
コレは、新撰組の桜シリーズを書き始める前に書いたものです。
このおかげで見事スランプ脱出に成功して、
桜シリーズもかなり順調に進むようになりましたvv
スランプ脱出ありがとう、暴走シリーズよ(^^)
すっごく久しぶりに書いたこのシリーズ。
最初は普通の短編として練っていたネタだけど、
途中で路線変更。
最後はちゃんとまとめられたかな?
の〜んびり更新していく予定のこのシリーズ。
この後、ちょっとしたラブ要素が加わって
このシリーズにも転機が訪れるかも・・・・vv