バージンドーロを夢見る乙女?










「はぁぁぁ・・・・ここの部室、ホントに居心地いいよなぁ・・・・・・」

「おい、こら。部室でくつろいでんじゃねえ」

「んだよ跡部。こんな豪華な部室を独り占めしようってのか?」


部活が終わり、部室に戻った氷帝レギュラー陣は
部室のロッカールームに置いてあるソフーに寝転がるの周りに集まる。
氷帝の部室はやけに豪華で、正レギュラー専用の部室には
自分専用のロッカーはもちろん、トレーニングルームからパソコン、
そしてソファまで置いてあるという脅威の豪華さ。


「俺達は今から着替えるんだ。さっさと出て行け」

「うっせー。そんなもん、あたしの知った事か。
それに、この豪華な部室は一体誰が掃除してると思ってんだ?あぁ?」


それを言われると、跡部はを追い出せなくなる。
この世のどこかにこの最強女に勝てる奴はいないのか、と落ち込む跡部。
そんな無茶な夢はさっさと捨てるが吉、としか言いようがないだろう。


「なぁなぁー。今日桂子と話してたんだけどさぁー」


ソファーに寝転がったまま、ダラダラしながら喋る
突拍子もなく繰り出された会話に、レギュラー陣は練習後の水分補給にと
水の入ったボトルを手にして口をつける。


「バージンドーロって、やっぱ女の夢なんだなぁ」



ブーーーーーッ!!



跡部、の言葉に思わず口に含んだ水を勢いよく噴射。


「うわ、なんだよバカ跡部!!きたねぇな!!」

「お前がバージンロードだと・・・・・・?はっ。笑わせんな。
お前にそんな夢があってたまる、
ごふっ!!


跡部が言葉を続けようとしたが、ソファーに伸ばされていたの足が
跡部のみぞおちを蹴飛ばす。
こうなる事なんて分かりきっていた事なのに
懲りずにを怒らせる跡部の学習能力やいかに?
激しくむせ込み、
床に倒れ命尽きた跡部を放っておきは淡々と話を続ける。


「桂子がそう言ってたんだ。あたしにはよく分かんねーけどな。
あの純白の道を通るのって、やっぱ女の夢なのか?」

「やっぱり女性にとっては憧れなんじゃないですか?」

「へぇー。長ちゃんって女心の分かる奴なんだな。
あたしより女心に理解がありそうだぜ?」

「そうですか?僕なんかより、実際に先輩は女性なんだから
それはないと思うんですけど」


優しい言葉を掛けてくれる純粋な鳳に嬉しくなり
思わず寝転がったままの体制で鳳の両肩に腕を伸ばして引き寄せた。
焦る鳳の心も知らず、は歓喜あまって鳳を抱きしめる。


「チョタァァァ!!お前は本当にいい奴だなぁぁ・・・・・
宍戸みたいなヒネクレ小僧とダブルス組みながら、よくぞこんな優しい奴に育ってくれた!!
お前の言葉、ウソでも嬉しいぜ!!」

「あ、あの、先輩・・・・・!!その、恥ずかしいから離して下さい・・・」

「うあぁぁぁ、なんってカワイイ奴なんだお前はーーー!!」

「おい待て!!だれがヒネクレ小僧だ!!」


赤くなって照れる鳳がおもしろくて、頭を雑に撫でる。
文句を言う宍戸も一緒になり会話に交じって盛り上がっている所
今まで何か考え事をしていた忍足が言葉を発した。


「・・・・・・・・なぁ、。今なんて言った?」

「何がだよ?」

「だから、何が女の夢やって言った?」


突然の質問にはさっき言った言葉を繰り返す。


「だから、『バージンドーロは女の夢』だって言ったんだよ」

「・・・・・・・やっぱり何かおかしいで」

「何がだよ?」


忍足の言っている言葉の意味が理解できず、は問い返す。
鳳や宍戸も、忍足が何の事を言っているのか分かっていない様子だ。


「もう一回言ってみ」

「バージンドーロは女の夢」

「もう一回」

「バージンドーロは女の夢」

「更にもう一回」

「あぁぁぁもう、何なんだよ!!!さっきから何回も言ってんじゃねーか!!
バージンドーロは女の夢!!!・・・・・・・ん?」


そこまで言って、だけではなく鳳と宍戸も何かがおかしい事に気付いた。










・・・・・・・・・・・・・・ばーじんどーろ?







「・・・・・ぷっ・・・・・・あっはっはっは!!お前、バージン道路って、ははははは!!
渋滞中かっつーの!!渡るときは手を上げて渡りましょうってか!?
あははははははは!!!ヤベーだろそりゃ!!」

「せやから言ったんやんか。何かおかしいんちゃうか、って」


宍戸が爆笑しながらを指差す。
忍足も冷静に言っているつもりだろうが、必死で笑いを堪えているのが丸分かりだ。
鳳は笑っていいのか分からず、何だかあたふたしている。
笑い声と混乱の中、は自分の間違いにやっと気付き
情けないような悔しいような気分になる。


「う、うるせぇなー。ちょっとした間違い位誰にでもあんだろ!!」

「馬鹿かお前は・・・・・・・いや、言わずとしれた馬鹿だな。
道路とロードを間違えるのは『ちょっとした』の域を超えてるだろ」


いつの間にか、みぞおち蹴りでダウンしていたはずの跡部も復活し
に馬鹿連発を始める。


「くそっ、いつの間に復活しやがった、
このゴキブリ並生命力の所持者めが!!
しかも馬鹿馬鹿連発しやがって!!」

「事実を言って何が悪いんだ、あーん?
しかもお前、『純白の道』って言っただろう。バージンロードは白じゃねえよ」

「あぁ?ってか、聞こえてたのかよ・・・・・のびてたと思ってたぜ」

「お前の蹴りを食らって、薄れ行く意識の中な」


嫌味ったらしく言う跡部に反抗しようと思ったが
その前にはっきりさせておく事がある。


「バージンドー・・・・ロードって、白だろ?」

「基本的には赤だ」

「嘘だ!!ぜってー白だって!!」


絶対に自分の理論が正しいと言い張るを見て
跡部は小さくため息をつく。
宍戸、鳳、忍足たちは「そう言われてみれば、どっちだっけ?」と考えている。


「何の根拠があって言い切ってんだ?」

「親が結婚式挙げた時の記憶だ!!」

「・・・・・お前の親は再婚してるのか?」

「いや、違う」

「ならその頃お前はまだ存在してなかっただろうが!!」

「いってぇぇ!!人をボカボカとサンドバッグみたいに殴んな!!」

「てめぇな・・・・その言葉、そのままそっくりお前に返してやる・・・・・!!」


普段やられっぱなしの跡部が低い声で怒る。
まぁ、あれだけのこっぴどく遊ばれていては当然の反論なのだろうが
そんな事をに言っても謝ってもらえるワケでもない。


「まぁ、バージン道路が変だったって事は認めよう」

「いや、認める認めないの前に、明らかに間違いだろ」

「でも、色は白だ!!あたしのイメージでは、絶対に白だ!!
ちょっと待ってろ。今そこのパソコンで調べて証明してやる!!」

「・・・・・・・本当に人の話を聞かないな、お前」


ソファーから起き上がり、隣の机に並べられているパソコンに向かう。
検索の画面を開き「バージンロード」と打ち込み検索にかける。
たくさんの検索結果が出てきた中から、有力そうなページを開く。
その結果は。


「ほら、やっぱり赤じゃねえか。大理石とかもあるらしけど、純白はないぞ」

「・・・・・・・嘘だ」

「あぁん?」

「納得いかねーよ!!普通バージンロードは白だろ!?」

「お前に普通を語られたらおしまいだな」


跡部がいくらっても、は「絶対に納得がいかない!」と断固反対している。
他の三人に視線を向けても困った顔をするだけで
に賛同できる人はいない。


「いーや、絶対白だ!!断言できる!!
もし白じゃなかったら、お前の言う事なんでも聞いてやる!!」

「ほぉ。本当だな、それは?後で後悔するなよ?」

「おう!!」


が力強く頷くのを見て、跡部は「よし。ついてこい」と言って
部室から出て行った。
言われた通りについていくと、跡部はコート整備のために残っている部員達の前で足を止めた。
部員達は一斉に跡部に礼をして、尊敬の眼差しで跡部を見ている。
周りにいる女子達が「きゃー、跡部さまがいらっしゃるわ!」なんて黄色い声援を送っているのを見て
ぬぁーうっとーしー、きもいよー、さむいよー、たすけてママンー、と心の中で呟きながら
跡部が一体何をやるつもりなのか疑問に思う。


「おい、跡部。一体何を・・・・」

「跡部!!跡部!!跡部!!跡部!!」

「あぁーうぜぇ!!その跡部コール、直ちにやめやがれー!!」


の叫びは虚しくも跡部コールに掻き消される。
キッと跡部を睨んでみても、優越感に浸って満足そうな顔をしている。


「真昼間から異世界にトリップしてねぇで、さっさと思ってこいやクソナルシーが!!」

「ってーな!!なんでお前はいつも手・・・いや、足が出るんだ!!」

「さっき部室で殴られた仕返しだ。で、何をするつもりなんだよ?」


止む様子のない跡部コール中、跡部はまるで部員達の指揮をとるように
自信満々に片腕を上げた。
あぁ、やっぱりこいつはナルシスト道を極めてしまったんだ。
ここまで自分に酔えるなんて、もはやこいつは別世界の生命体としか思えない。
そんな事を思いながら、は哀れみの視線で跡部見る。


「跡部!!跡部!!跡部!!跡部!!」

「お前等!!バージンロードの色は何色だ!?」

「あーか!!あーか!!あーか!!」

「はぁ!?あ、跡部・・・・お前、これは一体何のつもりだ?」


一体何を思ったのか、跡部の一言でテニスコート中で赤コールが響く。
とうとう部員達まだ跡部に感化されてアホになってしまった。
優秀な生徒が集まる氷帝学園始まって以来の阿呆騒動勃発。
そんな事を考えていると、はようやく跡部が何をしたいのか理解できた。


「てめぇ、周りを仲間につけてあたしを否定しようなんて卑怯だぞ!!」

「あーん?誰のせいでこんな事になったと思ってんだ」

「お前だろ」

「お前だ、お前!!お前がいくら言っても納得しないからだろ!!」


言い合う二人だが、ぶっちゃけた所どっちもどっちだ。
跡部の言葉にカチンと来たは、跡部がやったように声を張り上げた。


「お前等ーー!!バージンロードは白だろー!?」

「おぉぉぉぉぉぉ!!」


に憧れる男子達から一斉に声が上がる。
もはや本当のバージンロードの色など、どっちでもいいらしい。
コートは跡部派VS派の戦場状態。
白熱する部員達。どちらの主張を譲らない跡部と





しかし、そんな情景をコートの片隅から見ていた宍戸達は呟く。


「・・・・・・・あいつら、傍から見たら自分達がどれだけマヌケに見えてるか全然分かってないよな」

「し、宍戸先輩!!二人に聞こえますよ!!」

「大丈夫やって。どっちもガキみたいに白熱してるから気付かへんやろ。
しかしまぁ、アホ丸出しやなぁ。記念に写真でも撮っとかへんか?」

「だ、ダメですって!!止めに行きましょうよ!」

「諦めろ、長太郎。今の二人に何を言っても無駄だ。飽きるまでやらしとけ」


と跡部をいくら止めようとしても、誰も賛同してくれない苦労人な鳳が
ストレスが故にハゲてしまう日もそう遠くないかもしれない。












〜後書きと言う名の懺悔室〜


・・・・・・・落ちが甘い!!甘すぎる!!
自分で書いていて、なぁんか微妙だなーと思っていたけど
これ以上もがいて話を伸ばしてもしょうがないので。
んーーー。いつもの暴走っぷりが発揮できん。
元ネタはもっとおもしろかったんですよー。
某友人と話していると、なぜかバージンロードの色の話になって。

友「やっぱりバージンドーロって赤だと思う」

棗「えぇー。白だよ死。白いバージンロードなんて・・・・・・ん?何か今違うくなかった?」

友「あ、はははは。流そうと思ったんだけどな」

・・・・・・・・流せるわけがなかろうが。
んで、いっその事ネタにしちまおーぜ?という事になって
この暴走シリーズを使って書いてみました。
でもあんまり暴走してないよー。次回はもっと暴走を予定しています!
ついでに、ようやく話が少しずつ進みます・・・・・・・・vv



     






感想を送りたい方は下からどうぞ。
返信は妄想Diaryにて。

名前:
言伝: