その暴走を止める者
―氷帝の女帝様―





氷帝学園3年、跡部景吾。
完璧なまでのオールラウンダーで
全ての技術においてトップクラスと言われる氷帝学園テニス部の部長。
氷帝学園の中でも女子生徒にかなりの人気がある。
けれど、たった一人そんな跡部に平気で悪態づく女子がいる。
。氷帝テニス部のマネージャーだ。



4時間目の昼休み前の授業が終わり、跡部と忍足は教室へ向かっていた。
部活の事や授業の事などを話しながら歩いていると
なにやら後ろからイノシシ大暴走のような音がした。




ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド・・・・・・・・




だんだんと大きくなってくるその音に跡部は足をとめた。
そして、同時に立ち止まった忍足を見た。


「おい、侑士・・・・・・お前も聞こえるな」

「あぁ。なんかが迫ってきてるような・・・・・・またお前のファンちゃうか?」


日々女子に追いかけらる跡部ならありうる事だ。
テニス部の部長で容姿端麗(自称?)ときたら惚れる女子も少なくはない。
しかし、この足音はそんな跡部の考えをぶち壊す。
わかる。これは、ファンなんかじゃない。
後ろを振り向くと、こっちに走ってきたのはやはり跡部のファンではなく
テニス部マネージャーのだった。


「あぁぁーーとぉぉーーべぇぇーー!!」


跡部の名前を叫びながらは驚異的なスピードで走ってくる。
その速さと言ったらもう、廊下を道行く生徒までをぶっ飛ばしそうな勢いだった。
風の現象により起こる「かまいたち」を思い出させる雰囲気だ。


「何のようだ。俺たちはこれから教室に戻る、」

「うらぁっ!!」

「げふっ!!」


跡部の言葉をさえぎってが助走をつけた
全身全霊タックルをくらわした。
体積はなくても、イノシシ大暴走並の助走付きののタックルは跡部を十分に吹っ飛ばした。
身長もそんなに高くないのに、しかも女子があの跡部を吹っ飛ばすなどなかなかできない事だ。
・・・・・っていうか、跡部に向かって体当たりなど
恐ろしすぎてする奴は意外にいないだろう。


「あぁ、やったんか。そんな恐ろしい効果音付きで走って来られたらこっちがビビってまうわ」

「よっ、忍ちゃん。今日もバリバリの関西弁だな」

「これは生まれつきや」


タックルによる吹っ飛ばされた跡部などアウト・オブ・眼中という風に忍足と話し出す
男っぽい性格のは男子とも気軽に喋れる女子だった。
喋り方もかなりサバサバしているし口もかなり悪い方だ。
すると、廊下に倒れていた跡部がいきなりムクっと起き上がりの頭をゴツンと殴った。


「いってぇぇぇ〜〜〜!!!てめぇ、かよわぇ女子になんっつー事すんだよ!」

「うっせー!こんな時だけ女ぶるな!誰がか弱い女子だ!自分の性格をもっと知る事だな」

「なんだと!?せっかくこっちからわざわざ出向いてやってんのに、なんだその言い方は!!もっと敬いやがれ!」

「なんでこの俺様がお前なんかを敬わないといけねえんだ!なんの恨みがあって
 出会いざまにタックルなんかしやがる!少しは女らしくなりやがれ!」

「お前にそんな事言われる覚えなんてこれっぽっちもねぇよ。
テメェなんかゾウに踏まれてぺらっぺらのセンベイにでもなってやがれ
女らしくなれなんておーーきなお世話だ!」

「誰がゾウに踏まれてぺらっぺらのセンベイなんかになるか!意味不明な事言ってんじゃねぇ!!」


いつも通り、永久に終わりそうにない2人の意味不明喧嘩を目の当たりにしながら
忍足は心の中で大きくため息をついた。
がマネージャーになって以来見慣れた光景だが
よくもまぁ、毎日毎日あきずに喧嘩するもんだ。
いいかげんネタが尽きないのかと忍足は少し不思議に思った。


「まぁまぁ。んで、どうしたん?なんか用事でもあるんか?」

「あ、そうだった。こいつのせいですっかり忘れるとこだった」

「なんで俺のせいなんだ!」


跡部を指差しながら言うを再び殴りそうな勢いの跡部。
仲裁したつもりが、また喧嘩の種を作ってしまいそうだった忍足であった。


「跡部にどうしても言いてぇ事があったんだ!耳の穴かっぽじってよーく聞けや!」

「そんな事言われなくても聞こえてる!何だよ、言いたい事って」


ふっふっふ、と不審に笑うを跡部はジロリと見下ろした。
その光景を見て、忍足は心の中で「これは・・・・・」と思っていた。


(もしかして、のやつ・・・・・・ついに跡部に告白する気なんか?
元々ちょっと変わってるけど、仲いい奴らやったしな・・・・・・んじゃ、邪魔者は退散しなあかんわな)


どうやったらこの状況で告白すると思ったのかしらないが
忍足はそ〜っとその場を離れようと心みた。
しかし、次にから発せられる言葉はある意味愛の告白なんかよりも
はるかに強烈な一言だった。


「跡部。お前、氷帝学園女子になんて呼ばれてるか知ってるか?」

「・・・・・・・なんだよ」

「なんだ、知らねぇのか〜?知りたいか?」

「知らねぇよ!早く教えろ!」


そ〜っとその場から離れようとしていた忍足はある物を見てしまった。
そう。の口元がニヤッとつり上がるのを見たのだ・・・・・
その笑みは明らかに妖しく、何かを企んでいる笑みだった。
背筋がぞっとするような、鳥肌が立つような笑み・・・・・・
忍足は本当に、マジ気でこの場から逃げたしたくなったのである。
これは、明らかに「告白」なんて絶対100%あってはならない状況だ。
しかし跡部はそんな笑みには気付かず、じっとを睨んでいた。

「女子の間でのお前の呼び名は・・・・・・・」

「・・・・・・・・?」




「氷帝の女帝様だぁぁ!!」




そう言って大声で高笑いし始めるを見て、忍足は思わず
眩暈&頭痛&貧血を起こしそうになった。
女帝とは女性の天皇、または皇帝の事。別名、姫帝(ひめみかど)とも言う。
一向に笑い終わらないの『女帝』発言に跡部はこめかみに血管を浮かべて
拳を全握力を込めてグっと握っていた。


「てめぇ・・・・・誰が女帝だぁぁぁぁぁ!!」

「バカ跡部〜〜!!女帝〜〜!!姫帝ちゃ〜ん!!!あっはっはっはーーー!!」

「黙れぇぇぇ!!!!」


言うだけ言って全力疾走で走り去る。ブチ切れてこちらも全力疾走で追う跡部。
そう。この光景を見て皆同じ事を思っただろう。
これこそ世に言う「愛の逃避行」ならず「愛の逃走劇」だ。
行ってみたいな愛の星。2人の世界で逃走劇、である。(?)


さて、こちらは2人の逃走劇生中継。
2人は学校中を走り回りながら、俗に言う「鬼ごっこ」をしていた。
そして走りながらも喧嘩は続行中であった。









「てっめぇ!!誰が女帝だ!!」

「お前に決まってんだろ、バーカ」

「なんでわざわざ女帝なんだ!せめて皇帝とか言えねぇのか!!」

「おい跡部、知ってたか〜?皇帝の『皇』って字は『美しく、大いなる』って意味なんだってよ?
皇帝なんてお前にはふさわしくねぇよ〜〜〜!!
もういっその事、『氷帝学園テニス部』なんて名前やめて
『女帝跡部テニス部』に改名したらどうだ?」

「うるせぇ!皇帝という言葉こそ俺にぴったりじゃねぇか!!!わざわざ女帝なんて呼ぶんじゃねぇ!」

「な〜にが『俺にぴったり』だ!自惚れんなっつ〜の!!」

「うっせーーー!!いい加減止まりやがれ〜〜〜!!」

「止まれって言われて止まるバカがいるかよ!!
くやしかったら捕まえてみやがれ、女帝ちゃんがぁ!あっはっはっはーーー!!」


そう言っては更にスピードを上げた。
こんな早く走れるんなら陸上部にでも入れ、と言いたい気分の跡部だった。
階段を駆け上がり、人気の少ない3階の真っ直ぐの廊下を更に走り続けた。
すると、跡部はいきなり何かに足を取られた。


「うわっ!!」


しかし気付いた時には時既に遅し。
跡部は見事に顔面からすごい勢いで床に倒れた。


「っーーーーーーー!!」


声にならない叫び声を上げながら顔を抑える。
足元を見るとそこには紐が張られていた。


「ちっくしょーー・・・・誰だ、こんな所に紐なんか張りやがった奴は・・・・・・・!」

「あははははは!!こんな古典的なワナに引っかかるなんて、やっぱアホ部だよな〜お前!!」

「てめぇかーーーーーー!!!」

「マジで顔面から床に衝突してやがるーー!!あーー、もう腹いて〜〜!!あははははは!!
さぁて皆さん。これはアホ部以外にやるのは大変危険なので、誰も真似しないよーに」

「もう許さねぇぞ・・・・・・覚悟しろ!!!!」

「あっはっはーーー!!バーカバーカ!!顔面激突女帝ちゃんーーー!!」

「黙れーーーーーー!!」


今日も氷帝学園で2人は活気ある(?)毎日を楽しく過ごしているのでした。
おしまい♪








〜後書きと言う名の懺悔室〜


えっと、はい。勢いに任せてやっちゃいました。
ギャグギャグギャグ、ひたすらギャグの一直線にしようかなーと思ったんですけど
やっぱりちょっと恋愛要素を入れないと
終わりが見えない気がして、ちょいとラブ入れてみようかと思います♪
だけど、しばらくの間はこのまま暴走してみようかと思います。
ギャグってきましょーvv